天国にちょっとだけ近い場所

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天国にちょっとだけ近い場所


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 まるで天国にまで続いていそうな階段だ。――はじめてその、古ぼけたビルヂングの入口に立った時に、僕はそう思った。
何しろ階段は入口からずっと折れ曲がらずに三階の入口まで一直線に続いている。近眼気味の僕にしてみればほとんど天国にまで続いてるんじゃないかと思ってしまう程だ。
 綺麗な模様の入ったタイルが所々欠け落ちた階段を一段一段登りながら、 そうだ、こんな階段は外国映画の古い建物によく出てくるなア、なんて考えている。踊り場もなくて手すりも半分程しか残っていないし、それもグラグラしている。
 二階にはすりガラスのドアがいくつかと、やたら古びた郵便受けがこわれかかってポツンとあるけれど、ちょっとした広間みたいなそのスペースはホコリまみれで人の気配は感じられない。××経済研究所、××株式会社東京営業所、あるいは単に名字だけを小さな紙に書いてドアに張りつけてあったり、でも、いずれのドアのむこうもシンと静まりかえって物音はしない。
 更に上へと登ってゆく。
 三階かと思ったのは実は踊り場で、階段はそこで折れ曲がっている。大きな窓にダマされたのだ。
 三階にもやっぱり小さな事務所が並んでいて人気はない。
「ここです」
 一つのドアの前で案内の老人が立ち止まった。その老人もまた、このビルと同じくらいに古ぼけて見すぼらしい。
 それでもドアを開けると中は結構に片付けられて、壁も真っ白く塗られていた。
「ここの上が屋上なのです。半年に一回くらい、消防署の検査で通らせてもらいますですが。狭かったらこの階段に荷物を置いてもかまわないんですが、ね」
 なるほど、部屋の壁からいきなり階段が出ているのだ。まるでエッシャーの絵でも見て だいるみたいな気分で、めまいがしてきそうだった。
 場所の割には嘘のように安い部屋代で、しかも敷金も権利金もいらないという好条件も あったけど、僕がその部屋に住む気になったのはその階段のせいだと言ってもいい。部屋の中に階段を飼っておくなんて、チョット酒落ているじゃないか。




「何だか落ち着かないわよ」
 いつものように僕の絵のモデルを済ませたあとで、裸になりついでというわけでもないけどそのままベッドで僕に抱かれながら彼女はそう言った。
「気のせいだよ。はじめての所だからじゃないか?」
 さっきから僕は彼女の乳房を盛んに唇と舌の先で悪戯しながら、指でヌルヌルしている下腹部の柔らかな肉をまさぐっているのだけれど、彼女はしきりに背後を気にしている。
「そうじゃないのよ。階段。誰かが降りて来そうなんだもの」
 確かに部屋の壁からいきなり屋上に出る階段が出ているというのは奇妙なものかも知れ ない。
「それに何だかお化けの出そうなビルだしさ」
「あの階段はね」
 自分のペニスの根元を握って目標を定めながら僕は言った。ゆっくりと彼女の中に押し 込みながら言葉を続ける。
「天国へと通じる階段なのさ」
 さすがにピストン運動をはじめると彼女も文句は言わなくなった。そのかわりに次第に鼻声を荒くしてくる。
 前に住んでたアパートでは何しろ壁なんてベニヤ一枚。ないのも同じで夜中になるとセキばらいもできない。どうせ素行の悪い絵描きの卵なんだから何をやってかまわないようなものだけど、さすがに女を連れ込んで大声で泣きわめかせるのはためらわれて、彼女も声を出さずにあえぐ癖がついてしまったようだ。最初はそうじゃなかったのだけど。
 でも、ここでは僕が管理人替わりなのだ。昼間は二階と三階の事務所に人が出入りするものの、夜はこのビルには僕しかいない。
「声、出せよ。どうせ誰もいないんだから」
 丁度良い濡れ具合と締めつけ具合の彼女にそう声をかけた。
「あ......う......」
 遠慮がちの苦しそうな声が彼女の返事だった。図に乗って腰を送り込む速度を上げる。
 せいぜい長びかせようなんて下心もあって、僕は身体の下の彼女の声の変化に注目していた。頬を紅く染めて髪を振り乱し、顔は、田舎の中学生が友達にいじめられたみたいな情ない泣き顔になっているけれど、彼女の声は甘ったるくてなかなかにそそる。人間、何。 かしら取り柄があるものだ。目をつぶってしまえば角のラーメン屋の店員だなんてわからないような色っぽさなんだから。
 僕が腰を突き出してグッと押し込むたびに彼女は「んあ......う」と声をもらす。それを 何度も何度も繰り返していると、気持ちいいのか声がつながってきて、一きわ高く絶叫し、すすり泣きに変わる。その変化はなかなかに面白い。今度はこのあえいでいる顔をキャンバスに描きたいなどと思ってしまう。
 そのうち息苦しくなって僕が顔を上げると、目の前にモンダイの階段。確かにチョット驚ろかされる。慣れないとギョッとするのだ。
 せめてセックスの最中だけでも見えないようにベッドの向きを変えなきゃと、僕はそう思いながら、今日は安全日だと言っていた彼女の熱い内部に思いきりザーメンをあびせかけて行った。


 十月のH展に落選したら本人にあげる事になっている彼女の裸体画はやっと下塗りが終わった所だ。
 バックに銀をひいてこれからその上に透明なプルシャン・ブルーとちょっぴりのカーマン イン・マーダーを塗る予定だ。そこにポツンと浮かんだ少女の姿は、とても彼女がモデルだとは思えないちっぽけでやせっぽちだけど、何せ、只で、その上に終わったあとで抱かせてくれるモデルなんてそうはいるわけないから仕方がない。それに彼女自身もその絵は気に入ってるのだ。おそらく見た通りに描いたら抱かせてなどくれなかっただろう。
 明日も仕事があるからと、彼女はそのあとすぐに帰ってしまい、僕は一人でキャンバスにむかった。
 あと三日もすればモデルなしでも描けそうな所までこぎつけている。このビルからだったらアルバイト先の波止場に近いから絵もはかどるだろう。何しろ片道四十分は違うんだから。
 敷金と権利金の分が浮いたからその分、来週からしばらくはアルバイトを休んで絵に専念できそうだ。
 そろそろ夜が明けかかっているけれど、少しでも寝ておこうと思って、僕は再びベッドにもぐり込んだ。


                        続く

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現実はどんなでも、ロリ美少女を夢見ることは忘れない
そんな『天国への階段』

さすらいチンポ放浪記

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