上海物語

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     上海物語


奇妙なコレクション

 私の家には、アルバムに貼られていない戦前の写真が幾葉 かあります。いずれも、ほとんど薄茶色にまで変色して微かに画像が認められるくらいにまでなっておりますが、それら の写真は父の遺品として、桐の箱におさめられ、金庫の一番 奥にしまわれております。
 その木箱の存在に私が気付いたのは、六十八歳で死んだ父 の葬儀も終え、遺品の整理をしていた時でした。上海で現地除隊した後も、日本軍関係の仕事をしていたという父の、当時の地図や書類の山の中から、それは出てきたのです。
 ただ単に山積みにされた書類の中で、それだけ箱におさめられた、ひょっとして何か大事なものでは――そう思いながらフタを開けた私の目に飛び込んで来たのは、何と極彩色の枕絵でした。
 戦後、引き揚げてからは苦労に苦労を重ね、やっと埼玉県の片隅に小さな工場を持った生真面目な父の遺品としては不似合いなその枕絵は、そう、丁度昔の葉書き程の大きさで、百枚以上もありそうです。時代的には明治以降のものらしく、えび茶のハカマ姿の女学生のものなども混じっております。
 その他にも、表紙の取れたような猥本。粗末な紙に青いインクで印刷されているのはいわゆる『スーハー本』と呼ばれるポルノグラフィーです。何冊かの大学ノートには、きちんとした万年筆の筆跡で古典的な漢文のポルノグラフィーが書き写されていたりして、結局それは私の父親の隠された一面をうかがわせる奇妙なコレクションだったのです。
 それらの中には上海事変以降、日中戦争の時代のほとんどを支那で過ごした父の経歴を物語るように、数枚の支那の春画も含まれておりました。
 日本の春画においては、男女両性ともにその性器は極端に誇張して描かれているというのは有名ですが、中国の春画においては逆に、まるで子供のように描かれます。ほとんど無毛の女の局部に、細くて小さな男のペニスが挿入されている 様は、むしろ上品でさえありました。
 そしてそれらの種々雑多な春画・春本の間に埋もれるようにして、古びた幾葉かの写真があったのです。




コレクションの統一のなさを反映するかのように、それらの写真もバラバラなものでありました。
一番多いのは日本人の娼婦の写真です。客寄せか、あるいはサービスか、馴染みの客に渡したものなのでしょう。
裸体の女が一人、あるいは二人で写っております。写真館らしき所であるいは着物の前を拡げ、あるいは全裸で、それぞれに陰毛を丸出しにして無表情な顔をこちらに向けており ます。
 いかにも戦前の日本女性らしい、足が短かく小太りな体型が時代を感じさせますが、正直言ってそれほど面白いものではありません。
 その他に、二枚だけですが、外国人の、それも男女の交接場面のものもありました。
 かなり古い写真で、大きなボンネットをかぶった太った女性が、立派なヒゲをたくわえた男性の、それこそ三十センチ はありそうなペニスを握り、頬を寄せているもの。そして椅子に座った男性にまたがり、ペニスを半分程挿入している女性と、それにまわりから手を出している二人の女性といった まあ、かなりに珍しいものと思われる写真です。
 商店会の同業者に、やはり好き者がおりまして、ブルーフ ィルムとか裏本、ビデオなど、現代のものならば色々と見せてもらった事はありますが、こうした古色蒼然としたものなどははじめてで、興味深く眺めているうちに、一枚の写真が 大学ノートの間からハラリと落ちました。
 おそらくは中国人でありましょう。切れ長の目をした少女の裸体写真です。
 どこかの写真館のスタヂオと思われる殺風景なバックの前に椅子が置かれ、そこに浅く腰かけた彼女は足を大きく拡げて自らの局部を突き出すようにして座っております。
 ほとんど無表情で、色褪せ、画像も薄れた印画紙の中から こちらを見つめる少女は、まだほとんどふくらんでいない胸と、そして無毛の局部とが痛々しい程です。
 これも、あるいは娼婦なのでしょうか。まだほとんど子供でしかない、――そう、今の日本人の年齢にすればせいぜい 十一、二歳でしょう、そんな少女が、他の写真に写っている娼婦たちと同じようにその無毛の局部に太くて固い男のものを受け入れていたのでしょうか。 いずれにしても父の死んでしまった今となっては一切の手がかりは失なわれ、全ては歴史の闇の中でしかありません。
 私は元通りに大学ノートにその写真を戻そうとして、それ に書かれた文章に目を止めたのです。

 色鮮かなライトブルーのインクの筆跡で書かれた文字は他のノートと同じ、私の父のものらしい筆跡であります。
ただ、異なっているのは、他のものがキチンとした楷書なのに、その文章だけは読み取りにくい乱れた筆跡で、しかも 何個所も訂正や書き込みがあるのです。
他のものが古典ポルノを筆写したものである事を考え合わせると、もしかするとこの文章だけは私の父の体験談であるのかも知れません。
私はその古びた大学ノートを自室に持ち帰り、読みにくい文字に目を通しはじめました。


                      続く

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陰毛痒い痒い陰毛文学

とてもリアルで、ノンフィクションのようです。密度感、濃密です。素晴らしい

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