![]() 淫 華 『揉』の章 聖ミカエラ女学院に黄金の聖水が降る時 シンガポールのシャングリラは泊まった事があるんだが、スリランカを訪れた帰路で、たまたま熱を出して寝込んでいたので、ほとんど街を歩いてない。ホテルでワンタン麺食ってただけだ。ちょっとだけ出たが、おいらの好きそうな雑然と腐ったというか、発酵したようなエリアはないようなので、もう一度行きたいとも思わない。 『謀』の章 合宿シンガポール旅行のアブナイ夜遊び チャンギ国際空港は、いつもながらのよそよそしい笑顔で少女たちを迎えてくれた。 東南アジア経済の優等生。リークアンユー好みの清潔な街。おまぬけな日本人観光客でも、よたよた歩きの白人老夫婦でも、どんな旅慣れないニンゲンでも、ひとしく楽しませてくれる街、シンガポール(金さえ持っていれば、だが)。 「ホテルはシャングリラよ。......この街でいちばん高級なホテルだわ」 巫華は先頭に立ってつかつかと歩きながら説明した。 「知ってる、知ってる。あたし、泊まったことあるもん。安い部屋だったけど」 「いいなあ、みんな海外旅行してるんだもんね。アタシなんか初めて」 「いいじゃん? だってパパママといっしょじゃ、どこ行ったってオンナジだし」 「そうよ、そうよ。今回は思いっきり、羽根をのばせるわ」 とりどりの夏服でおしゃれした娘たち。 ぜんぶで十三人の処女たちだ。ただし処女とはいえ、全員『処女陰唇』作成済みの淫乱すぎるヴァージンだが。 それを引率するのは、例によって体育教師の福地。(みんなの荷物を持たされて、ヒイヒイ言っている。ウェイトリフティングの選手だったと自慢したのが裏目に出たのだ) だが、実質的には巫華の案内だ。 巫華は何度も訪れたことがあった。 あの偽ジョン・ローンの煬陽之、巫華の従兄が支配するチャイナドール・シンジケート、シンガポール支部は、もうひとつの自宅のようなものだから。 |
「おいおい、これはあくまでも『中国文化研究会』の夏季合宿なんだからな。あんまりハメを外すんじゃないぞ」 と言いながらも、いちばんうきうきしているのは彼だった。 もともと利口なオトコじゃない。 そのうえ、このところヤリすぎで脳味噌がザーメンになっている。ニタニタして馬鹿みたいだけど、それはまあ、仕方のないことだ。 「やあ、みなさん、久し振りです」 建物を出たところで、あの懐かしい顔、偽ジョン・ローンをみつけてワッと歓声をあげる少女たち。 「お車を用意しましたから乗ってください。挨拶はホテルのほうで」 ロールスロイスのリムジンが四台、並んで待っている。お揃いのお仕着せを身につけたインド系の運転手たちが荷物を運んでいった。 これには、さすがのお嬢さまたちも驚いたようだ。 あっけにとられてボーッとしている。 「ジョン・ローンじゃなかった、......煬さんだっけ? すっごいお金持ちなのねえ」 偽ジョン・ローンはニコニコしながら「チョットね」と日本語ではにかんで見せた。また、ワッとたちのぼる歓声。 高速道路を快適なドライブ。 すぐにホテルについた。 もっとも巫華は、陽之とふたりだけ、クラウンのスーパーロイヤルサルーンであとを追いながら計画の打ち合わせだ。 「どこから借りてきたのよ、あのロールスは」 「お客さんの提供さ。アラブの金持ちが三人いてね。......あとはイタリアの貴族が二人と、イギリスの上院議員、ベルギーのダイヤモンド商とか。アメリカの油田王なんてのもいたなあ」 「しっかり集めたわけね」 「その点、ぬかりはない」 「みんなはアナタとヤリたがっているわ」 「光栄ですな」 日本に滞在した二週間で、偽ジョン・ローンは五人の聖ミカエラ女学院生のヴァージンを奪ったのだった。それもみんな、カメラの前で。 少なくとも、十三人の処女たちのあいだではスーパースターだと言っていい。 「けど、あいにく定員いっぱいだ。断るのに苦労したよ」 「ふふっ、ジャパニーズ・ガールは人気者ね」 「おっと、ホテルについたぜ」 オーチャード・ロードの脇の小高い丘に建つホテル、シャングリラ。 滑りこむロールスロイスを、けばけばしい制服のドアボーイ(といってもインド人のいい年齢をしたおっさんだ)が最敬礼で出迎える。 もっとも、出てきたのがニホンのジュニア・ハイスクール・ガールたちだったので、かなり面食らっているようだったが。 「チェックイン手続きのあいだ、こちらでドリンクでもいかがです?」 庭のプールを見おろすロビー。 やたら広いロビーの片すみでは弦楽合奏団がバロックを奏でている。(どういうわけかエレキギターのベースが参加しているのは、まあ、東南アジアらしいご愛嬌だが) 娘たちはボーッとしたまま、窓ぎわの席にとおされた。 不思議な一行をギョロっと睨むアラブ系の男たちの視線も気にならないようだ。 「明日の夕方、ポーラスター号は出港します。......こぢんまりした、いい船ですよ。もちろんワタシもごいっしょしますが」 「あのう、自炊ですかあ? だったら買い出ししなきゃならないけど」 「ばっかねえ、あんた。自炊のわけないじゃん」 クルーズ客船というモノを知らない少女の場違いな質問に、偽ジョン・ローンは余裕たっぷり、魅力的な白い歯を見せて笑う。 「はっはっは、ご心配はご無用。......ワタシの店のシェフが乗りこみますから」 特注のフルーツ・バスケットとパフェが届く。十三人の少女たちは、ちょっと遅めの午後のおやつに、狂気乱舞してとびつくのだった。 夕食までの時間も、彼女たちはむだにしない。 シャングリラからオーチャード・ロードは歩いて五分。そのオーチャード・ロードといえば、世界に鳴り響くショッピングのメッカだ。 ル・クラシックでデューティー・フリーして、グッチとヴィトンを覗いて、伊勢丹でウインドー・ショッピング。マクドナルドでひと休みして、ウロウロしていたら約束の時刻になってしまい、あわててホテルに戻ったのは五分過ぎだった。 ロールス軍団は駐車場で手持ちぶさた。 「いえいえ、どうぞごゆっくり。......シャワーと着替えがあるでしょうから」 インド人運転手が苦笑いしながら流暢な英語。 「すいませ~ん」 恐縮しながらあやまるリーダー格の北澤ゆかりだったが、考えてみれば、十三人の少女たちが汗まみれの服を脱ぎ、シャワーを浴びて着替えるには、いくら化粧のいらない中学生でも、三十分ではすみそうもない。 巫華の姿は見えない。もちろん偽ジョン・ローンも。 けれども着替えとシャワーで頭がいっぱいの少女たちの中に、そのことを不審に思う者はだれ一人いないのだった。 ところで、観光客の知らないシンガポールは『団地国家』でもある。 狭いところにゴチャゴチャ集まって住むのが好きなアジア人種の性格そのままに、二百六十万の人口の、なんと九十パーセントが高層住宅に住むという極端な国だが、それでも高級一戸建て住宅がないわけじゃない。 シャングリラからほど近い植物園、ボタニックガーデンの裏手に、そんな高級一戸建て住宅のひとつがあった。 外から見る限りにおいては、延々とつづく高い塀が見えるだけだ。 巫華と偽ジョン・ローンの二人は、その塀の中、英国統治時代のおもかげを残しながらもよく手入れされた、トロピカルな建物の中だった。 「おじさま、おひさしぶりでございます」 膝まづいて挨拶する巫華を、ひとりの老人がにこやかに迎えていた。 「おお、巫華か。......いい娘になったのお」 「おかげさまで。今回は陽之さんにずいぶんお世話になっておりますわ」 「なになに、おたがいさまじゃ。まあ、ゆっくりして行くがよい」 広い庭を見おろすテラス。 さっき激しいスコールがあったばかりだ。ムシムシする熱気が澱んで、そこにカーッと夕陽が照りつけて、庭はたまらない蒸し暑さ。だが、このテラスは椰子の木陰になっているし、冷たい飲み物をサーヴィスする少女、大きなファンでゆったり扇ぐ少女、それに絹のハンカチーフで額の汗を拭う少女までしたがえて、老人はけっして暑そうな顔はしていなかった。 チャイナドール・シンジケート。 世界中にネットワークを張りめぐらし、あらゆる国のVIPたちの欲望と財産とを集める組織の頂点に立つオトコともなれば、これくらいの贅沢は許される。(少女たちがすべて全裸であることも含めて、だ) 「巫華さま、お飲み物はいかがです?」 全裸の美少女が聞いた。 「いや、ボクたちはいいよ。そろそろ出なきゃいけない時刻だ」 かわって答えるのは、老人の息子、偽ジョン・ローン。 「まあ、いいじゃないか。ニホンの話も聞きたい」 「......陽之さん、どうせあの娘たち、遅れるに決まっているわ。ニホンのオンナノコがショッピングに行ったんだもの」 娘たちについては、巫華のほうが読みは鋭かった。 そのときちょうどハンドキャリーホンの呼び出し。汗拭き係の美少女が出て、老人に耳打ちした。 「はっはっ、巫華の言うとおりじゃ。一時間は遅れるらしい」 下界から嬌声が立ち昇ってきた。 椰子の樹々にかこまれて青い水をたたえたプールがある。赤道直下の強烈な陽射しが陰ってきたのを待ちかねて、どこからか現れた少女たち。 「まあ、ずいぶん増えましたのね?」 総勢二十名ほどになるだろうか。いずれも、水着の痕跡が残るのを嫌って全裸だ。 「ふおっ、ふおっ、......天安門、ヴェトナム難民、わしらのメシのタネが尽きないというのは、困った世の中じゃ」 「先月は本国から五人、それにヴェトナムから逃げてきた中国系の娘たちが三人。これ以上は収容しきれないよ」 偽ジョン・ローンが説明した。 「中国文化は四千年前から、権力の腐敗と戦乱の虐殺とで成り立ってきたんですわ、しかたないことよ」 「勉強しとるようじゃの」 冷やした中国茶が運ばれてくる。 ゆっくりと、そのプーアル茶を啜りながら巫華は今までのことを説明していった。ときおり偽ジョン・ローンも言葉を添える。 「じゃが、せっかく宝の山に踏みこみながら『獲物』が十三人だけというのも、もったいないような気がするのお」 「あら、ホンの小手調べですわ。もっとスゴい計画、あるんだけど。ねえ?」 「それは、まあ、内緒にしておきましょう。いずれお楽しみということで」 「わしはリタイアした身じゃ。とにかく、シンガポール支部の経営はお前にまかせたんじゃからな」 そう言いながらもまだ隠然たる力を握る老人は、楽しそうに笑うのだった。 しゃぶしゃぶ『いずみ』での食事のあいだ、巫華がチラチラと視線を送ってくるのに、北澤ゆかりは気がついていた。 ......なにか、ないしょの話でもあるのかしら。 そのカンは当たっていた。さりげなく手洗いに立ったゆかりを、巫華が追ってくる。 「いいかな? ちょっと相談なんだけど」 「うん、そう思ったんで。けど、なにか?」 壁によりかかった巫華は、黙って指を折ってみせる。 「......つまり、わかる? アナタたち、十三人」 「えっ?」 「鈍感ねえ、ミカエラはカトリックの学校でしょ? つまり、あたしも含めて、イエス・キリストと十三の弟子、っていうわけ」 「だから、それで?」 「ユダが必要だわ。キリストを裏切るユダが」 突然の、あまりに突然の言葉。 だが、ゆかりにはその意味が理解できた。 「あたしにユダになれって?」 トイレの番人のマレーシアンの中年女が聞いている。だが、日本語はあまり理解できないのだろう、不思議そうな顔で見ているだけ。 「信用してるの、ゆかりだけよ。他のオンナノコたち、スキがあればだれとでも寝ちゃうような連中ばかり」 そう。......まだ巫華のOKは出ていないのだった。 処女陰唇は完成した。 十三人の娘たちは、処女とはいえ、いつでもオトコを受けいれられるだけの『肉体』とテクニックを身につけ、なおかつ偽ジョン・ローンが奪った五人のヴァージンたちの喪失ぶりを見学している。(アレは絶好のシュミレーションだった) テクニック抜群の娼婦としても通用するだろうし、逆にまったくオトコを知らない生娘でも通用するのだ。 だったら、いつ、だれと寝たって構わないじゃないの......というのが本心なのは、言うまでもなかろう。かろうじて巫華の言葉で、『体験』を思いとどまっている状態だ。 「陽之とメイク・ラブして。......ううん、別にヒトに見せる必要ないわ。勝手にどっかでシてくればいいの」 ゆかりには思いあたることがあった。 屋上でのオシッコ事件だ。 おそらく、あの屈辱は死ぬまで忘れられないだろう。それほどショックな出来事だった。なのになぜ、この巫華といまだにつきあっているのか、自分でも理解できないのだが。 ただ、冷静に考えてみると、あの『事件』は聖ミカエラ女学院の生徒たちにとって、別の意味を持っていなかっただろうか? あの『事件』がなかったら、おそらく中国文化研究会も生まれていなかった。 巫華はそれを『触媒』と呼んでいる。 だが、ゆかりはそれをどう呼んでいいかわからない。わかっているのは、それが生徒たちにとっての『起爆剤』であるということだけ。 プライドもある。 無視されるよりは、妬まれ、恨まれたほうがいいというプライド。 「みんなはアナタを恨むわ。爆発しそうになる。......でも、ダイジョーブ。ポーラスター号が待っている」 「どういうこと?」 「ポーラスター号で『許可』を出すわ。もう、アナタたちは自由。いつでも好きな時にオトコに抱かれる自由を手にいれる、というわけ」 漠然と、ゆかりは理解した。 「そう、......ポーラスター号の他の乗客を知りたいものだわ。どういうメンバーなのか」 きわどいあてこすりにも、巫華は静かに微笑んでいるだけだ。 「さすがね、ゆかり。頭のいい娘って好きよ」 じっくりと損得を勘定してみる。 少なくとも、十三人のうちでもっとも早く体験できるというメリットはある。つまらないコトかも知れないが、この十三人のあいだでは重要なことだ。それに、自分以外の誰かが偽ジョン・ローンに抱かれるというのも許せないし。 「みんなでディスコに行かない? 陽之にいさんはかなりのカオよ」 思いっきり羽根をのばしたいという少女たちの欲望。異国の夜、ディスコの騒音。 「で、あたしはあのヒトとどっかに消える」 「そう、そのとおり」 「だったらシたフリだけでいいんじゃない? ホントにしなくたって」 「それでもいいわ、したくなければ。アナタの自由よ」 しないで済ませるゆかりでないのは、巫華はだれよりよく知っているのだった。 「ゆかり、......キミの初めてのメイク・ラブに乾杯」 二杯目のシンガポール・スリングのグラスが小さな音でカチッと鳴って、けれど、ゆかりは酔えそうもなかった。 「どうしたの? 元気がないじゃないか」 生まれてはじめてのディスコ体験で浮かれた小娘たちの眼を盗んで、とうとう。連れこまれたのは、陽之の自宅だという豪邸だ。 出迎えた使用人を追い払って、ふたりっきり。 ソフトなBGMと間接照明と、この街の名前をつけたカクテルと。 「あたしたちを、どうしようっていうの?」 「どういう意味だい?」 「ポーラスター号のこと。あたしたち、売られるんでしょ? いいの、隠さなくたって」 二杯目のカクテルも、陽之はひと口で飲み干した。 「残念ながらキミだけは違う」 ぬけぬけと言いはる偽ジョン・ローン。 「キミはボクの恋人として選ばれたんだからね」 せいいっぱいのオシャレをして、ゆかりは、ヨーガンレールのシルクのワンピース。(やたら高かったけれど、しぶい山葵色がひどく気にいったから)ピンクの口紅を引いたその唇を、オトコはジッと見つめている。 「嘘。......それもアナタたちの都合よ」 そばにより添って、耳もとでささやきかけていた陽之は、離れて冷静な表情になる。 「キミたちは自由だ。売るの、売られるの、っていうモンダイじゃない。たしかにポーラスター号の乗客はオトコばかりだけど、それだってみんな、世界各国のVIPだ。金でオンナを買おうなんていうニンゲンじゃないよ」 「オモテムキはね」 「そのとおり」 ひどく魅力的な微笑を見せて、偽ジョン・ローンはゆかりを眺めている。 「ポーラスター号の多島海クルーズの料金だが、キミたちは二等で九百八十USドル。彼らは一等で、なんと一万二千USドルだ。が、......実は一等も二等もまったく同じでね。ないしょだけど」 「まるで田舎のディスコね」 「そう。ジャパーニーズ・システムを取り入れてみた」 得意のあてこすりが通じなかったので、ゆかりはカッと頭に来た。 「ニホンのオンナノコはね、初めての『体験』は好きなヒトとしたいものなのよ」 「ボクはキミのことを好きだよ」 「嘘ばっかり」 「そう、ボクはひどい嘘つきだ。......けど、キミの前では嘘はつきたくないな。好きなオンナノコの前では、ね」 ゆかりは彼の顔をジッと見あげた。濡れたようなオトコの唇がゆっくりと動いている。 ......アタシってば、何、しているの? こんなつまらないケンカをしに来たんじゃない。抱かれに来たハズなのに。 ゆかりは今までの『人生』について思い起こしてみた。 いろんなオトコと寝た。 何十本ものペニス、指の中で、あるいは口の中で、痙攣し、しゃくりあげ、生ぬるいモノを吐き出すグロテスクな肉棒。 でも、その本来の用途だけはまだ知らない。 ......いいじゃないの、つまらない意地、張らなくたって。こんなにいいオトコが抱いてくれる、って言ってるんだから。 あるいは、断ってしまったら、この役目は他人のところに行ってしまうだろう。 ゆかりじゃなくっても、誰でもいいのだ。偽ジョン・ローンに抱かれて、他の少女たちの嫉妬心をかきたてることが出来れば。 ......だったら。 「いいわ、......好きにして」 なげやりな態度でゆかりは言った。 「オーケー、好きにするよ。キミの好きなようにね」 ふわっと抱えあげられるのを覚えるゆかり。まるで昔のアメリカ映画みたいに抱えあげられて、ベッドルームに運ばれる。 巨大なベッドに乱暴に投げつけられて焦ったけれど、柔らかなクッションが何事もなく受け止めてくれて、軟着陸。 ......どうふるまえばいいんだろう、と、ふと思う。 だって、彼の処女強奪シーンはみんなで繰り返し眺めいったものだし、いいえ、カレのほうだってゆかりのハーフ・ヴァージンぶりも、承知のはず。 お互いに手のうちを知っているのに、何をいまさら......。 そう思いながらも、これから起ころうとしているコトを思うと、なぜかしら震えが止まらないゆかりなのだった。 妙な部屋だった。 天井いちめんに絵がかいてある。 くすんだ色づかいで、天使たちが群れ遊び、白く薄いレースの衣装をまとった女が花を撒きちらす。 どこからか投げかけられる照明でそんな映像が浮かびあがり、そして、効きすぎるほどの冷房。悪いクセだと思う。金持ちだからってやたらに冷房を効かせるのは。どこに行っても、シンガポールは底冷えのする寒さだ。 「キミのそういうところが好きだ」 偽ジョン・ローンはそう言った。裸で、裸のゆかりを抱きしめて。 「どういうところ?」 「意地っぱりで、頭のいいところさ」 「そうかしら。あたしは大っ嫌い」 効きすぎる冷房にも、効用はある。少なくとも男の肌のぬくもりが恋しくなるくらいの。抱きしめられ、くちづけされると、つい、うっとりしてしまう。 「キミはベテランなんだって? まかせるから、好きなようにしてごらんよ」 偽ジョン・ローンはずるい男だった。 そう言われて、握らされて。 ほどよい大きさに膨れあがった肉塊は、体育教師の福地のモノと違い、さほどグロテスクな印象はない。むしろ筋肉質でスレンダーな外観だ。 「口で?」 ゆっくりと下半身に移動しながら。 「それもいいな」 フェラチオにはちょっとばかり自信がある。少なくとも処女のくせしてこれだけじょうずな女の子って、そうザラにはいないハズ。 髪をかきあげ、横顔がはっきり見えるようにしておいて、ぱくりと。顔の見えないフェラチオなんて、せいぜい三十パーセントくらいの効果しかないから。 口にちょうどいい大きさの、尖端部。 柔らかく熱い肉に包まれたそれは、別にどうってことない、他のオトコとおんなじ。 適当に柔らかくって、適当にカタくって、適当に大きくって。 ゆかりは舌をからめて舐めながらスラストする。暖かいセックスを連想させるような動きで、首をゆっくり振って、出したり入れたり。 茎の表面をいちめんに走る血管がドクドクしている。 ムクッ、ムクッと勃起が激しくなってくる。 ほどよい大きさだったはずなのに、それは口いっぱいに巨大化して、やがて含みきれない大きさに。 ......ずっと大きい。あの時よりも。 そう考えたりする。 ヴィデオの生中継で飽きるほど眺めたコイタスの場面。 泣きじゃくりながら処女を奪われる少女たち。(もっとも泣くのは、快感のためだったりするのだけれど) ついさっきまで処女だった秘肉に出入りする肉棒。 何度も見たはずなのに、それよりずっと大きい。 なぜか、急に不安になってくる。 あの、『角先生』。 疑似男根による訓練で支障のないほどに拡げられているはずだ。なんの苦もなく挿入できると、巫華も言っていたように。 なのに、唾液でテロテロといやらしく光る肉棒は、あまりに大きい。 ......まっ、いいか。もっと遊んでしまえばいいのよ。 ジラすのもテクニックのうち。 ゆかりはオトコの身体を組み敷いて、馬乗りになった。 「いつもより、......大きいみたい」 「ああ。キミのことを好きだからね」 「嘘ばっかり」 そんな都合のいいペニス、あるんだろうか。相手によって大きさが違うだなんて。 「したくって、たまらないんだ。キミと」 「だから?」 「そう」 ゆかりの濡れたセックスのスリット。 それがぴったりと、肉棒にはまる態勢。ただし内部に、ではなく、あくまでも陰裂にそって。唇がねっとりと甘い蜜にからんで開き、こわばりを横にくわえこんで。 ゆかりは尻を振りはじめた。 ペニスのレールの上を行き来する列車になったような気分で。 巫華に教えてもらったテクニック。この体位だとクリトリスが直接刺激されて、きもちいい。それに男だって、挿入しているのと同じくらいの快感を得られる。 「ああ、......あっ」 恥ずかしいのに、つい、声が洩れてしまうほど。 しとどに溢れる愛液。ポタージュ・スープの潤滑油が滑りをよくして、太いレールの上を行き来するゆかりの動きは鈍行から快速、快速から特急になってゆく。 「すごく濡れてるね」 大きすぎると気にしているお尻をつかまえた偽ジョン・ローン。その双球のはざまに手をもぐらせて、秘部をまさぐって。 「恥ずかしい」 「ボクだって、こんなに」 わずかにズラして、ゆかりは握った。 持ち重りのする太さ。 「そう、......ああ、キミはじょうずだな」 慣れた手つきで、ゆかりは動かしてみた。指を輪にして、触れるか触れないかといった微妙な動きで。 「ありがとう」 なんだか妙に素直になってしまう。 メイク・ラブ。......日本語だとイヤらしい感じがするけど、英語でメイク・ラブっていうとそうでもない。言葉のとおりに感じられる、幸福な一瞬。 「まかせてくれるかい? ボクに」 だから、そう言われた時にも素直にうなずけるゆかりなのだった。 クッションをいくつも重ねて枕にして、それに身体ごと、もたれかかる姿勢になって、ゆかりは男を待つ。 初めてのコイタス。 それに、セックスが赤く濡れて開いているのが見える姿勢だ。 期待と不安と、いったいどちらが大きいのか、自分でもわからない。少なくとも相手が相手だから、痛いなんていうことはないハズ。 拡げられた膝のあいだにはいってくる男。 こわばりがあてがわれる。 根元を握って照準をあわせて、濡れたセックスにぴったりと。 「見える?」 「うん。ちょっと恥ずかしいけど」 けれど、見ていたい。 偽ジョン・ローンは根元を握ったこわばりを、グルッグルッと力をこめて廻す。クリトリスを中心にして円を描く動き。 「あっ、あ」 それは、予想もしていなかった動き。 感じやすくなった肉芽がビリビリと痺れて、動けなくなってしまうゆかり。 ヘンに身体が熱っぽくって、力が抜けて、動けない。そのぐったりした瞬間を狙っていたかのように......。 「......あ、あはっ、......入っちゃう......」 濡れそぼった唇を、みずからの指で開いていたゆかり。 その瞬間を見てしまった。 体育教師の、あのグロテスクな巨大サラミにも負けないほど大きい肉棒が、自分の身体に挿入される瞬間を。 ......きっと、あたしってば、世界一、淫乱な処女。 ズッ、ズルッ、と。 期待も不安も、そんなつまらない感情をどこかに吹きとばしてしまうほどの迫力。 「や、や~ん、こんなに、こんなになっちゃって」 つながったところを指で撫でて確かめて、それは、疑いようもなく挿入された状態。しかもかなり深くまで。 「そうだよ、キミの中に挿入ってるんだ」 二人の身体はつながっている。 節くれ立った逞しい肉棒で。 ねっとりした愛液が潤滑油になったためそれほどの抵抗もなく、また、ゆかりがぐったりしていたから、無駄に体力を浪費しなくて済んだ。まるであっけないほどの初体験。 「どんな感じだ?」 「うん、ズキズキしてるみたいな。......ううん、ぜんぜん痛くはないんだけれど」 いっぱいに拡げられた秘肉。充血してひどく感じやすくなっている。 「もう、ちょっとだから。......いい?」 こっくりとうなずく。 送りこまれる肉棒。 灼けた鉄棒が挿しこまれるように刺激的で、内臓がえぐられるほど大胆で、黒々と茂った陰毛に覆われた恥丘がふっくらと盛りあがるほどのボリュームで。 「ゆかり......?」 「うん?」 「カワイイよ。キミはいい娘だ」 どうでもいいようなセリフを口にして、偽ジョン・ローンは動きはじめる。 しゃくりあげるような微妙な動き。 重ねられたクッションにもたれかかる姿勢のゆかりには、すべてが確認できてしまう。つながっているところ、出入りするところ。 陽之も背後に手をついてのけぞり、二人はVの字になって、つながっているのだ。 わずかに肉がひきつっている。 摩擦感。 チリチリと肉が摩擦されて、熱を帯びてくる。 「お尻を動かしてごらん。うん、そう」 慣れてくると、その熱っぽい感じが決してイヤなものでないことを発見。そして、言われなくてもモジモジと腰がうごめく。 「......こう? ああ、でも、でも」 規則正しく抽送される動きと、ゆかりの動き。 ゆかりはお尻をわずかに浮かせて、ゆったりと揺さぶっていた。抽送の動きとあいまって複雑な快感が生まれる。 生まれて初めて経験する内臓感覚。 たまらない。 今までの自分のあやまちを思い知らされて、耳までカーッと赫くなってしまうのは、そのせいだ。......いままでのあたしなんて、ホンの子供。 クリトリスを撫でてキモチイイなんて、つまらない皮膚感覚にしか過ぎない。 「ああ、そうよ、そう。......スゴイ......」 しきりに腰を使いながら、でも、絶句してしまう。 たまらなくなってきた。 もっと貪りたい。 「ねっ、ねっ、アタシ、上になってみたい」 抱きついてせがむ。 ゆかりは、押し倒した男に乗っかって、スゴくイヤらしくお尻を振ってみたいのだ。 「キモチイイの?」 「うん。だから」 メイク・ラブってすごい。目と目を見つめあっただけで、すべてを了解しあえる。 そのまま、つながったまま偽ジョン・ローンを押し倒し、騎乗位になって、ゆかりは動いてみた。さいしょはぎこちない動き。けれどもすぐに、コツを呑みこむ。 両手をシーツについて、乳房を男にまさぐらせながらお尻を上げたり下げたり。リズミカルに動くのがコツだ。 潤滑油がシャフトにまわってたちまちずぶ濡れ。 むしろ乱暴なほどの指使いで揉まれる乳房。それさえもがジンジンと痺れる快感を作りだし、もちろん肉棒はもっとスゴい。 内臓がグチャグチャにかきまわされるスプラッタな快楽......とでも形容したらいいんだろうか。とにかくそれは、今までの火遊びなんかとぜんぜん違った、内部から湧きあがってくるキモチよさなのだった。 |
東北さん大変です。ここにエプスタイン島の主人がいますよ〜〜〜
もうええわチンポ文学