![]() 淫 華 『揉』の章 聖ミカエラ女学院に黄金の聖水が降る時 この小説は「マイケル三浦」名義で出版された。いつもの「川本耕次」だとパターンが出来てしまって発展性がないので、なるべくパターンを変えたい、だったら変名だろう、というので、「日本一いかがわしい」名前を目指して、マイケル三浦と名乗った。ちょうど、フルハムロード三浦とか、マイケル富岡とかTVに出まくっていた時代だ。なかなかの名作なので、アニメ化してくれないかな、誰かw 宮崎駿じゃなくてもいいからw 『揉』の章 聖ミカエラ女学院に黄金の聖水が降る時 背徳の物語を作るために、巫華はやってきた。 ......そう、この白い街に、なにもかも白く、湿っぽいもやに煙ったような、この『ヨコハマ』という街に、まっ赤な、欲望のルージュのように鮮やかな色で、淫らな背徳の絵物語をえがいて行くの。 ......巫華はそう思った。 なぜかしら、ちょっぴり感傷的な気分。 ハイヒールの爪先でキュッと地面を踏みしめて、透けっぽいブラウスの背すじをピッとのばして。 あたしって、美人? ニホンのオンナノコと比べて、どうかな。あら、そうでもないじゃない。みんなナカモリ・アキナみたいにカワイイのかと思っていたのに。 オキナワへのフライトを急ぐジャパニーズ・ガールたちとすれちがいながら、そんな感想を抱いたりして、......うん、でもハネダはニホンの『裏玄関』に過ぎないっていうし、ナリタやハラジュクにはもっと美人がいるのかも。まだ油断はできないわ。 「ヤマテに行ってください。......聖ミカエラ女学院です」 空港を出たところに待っていたタクシーを覗きこみ、飛行機の中で何度も練習したニホンゴで言う。ニホンで初めて使うニホンゴ。 「ヨコハマだね?」 誰も手を触れないのにドアが開いて、ドライバーは無愛想にそんな言葉を投げかけてきた。 ......えっ? ここはヨコハマじゃないの? ハネダって、ヨコハマとは違うの? |
地図で見るかぎり、ヨコハマもハネダも同じところにある。それにヨコハマは香港と同じくらいのビックシティだと聞いていたから、ハネダは香港の啓徳空港みたいなものだとばかり、思っていたのだ。 リアシートに腰をおろしてしまうと、せっかくのハイヒールのかいもなく、巫華はちっぽけな女の子。 身長百六十センチ。とはいっても、黒のピンヒールの高さがそのうち十二センチ。本物の身長は百四十八センチしかない。 ニホンのオンナノコみたいにお尻も大きくないし、太ってもいないし、あたしって子供にしか見えないかしら。 でも、せいいっぱい胸を張ってオトナびた笑顔をルームミラーに注ぐ。 なのにやっぱり、ドライバーのオジサンは無愛想なままで、なんか、自信をなくしてしまいそうだった。 ......揉・搖・哭・緊・看......。 馴れ親しんだ言葉を呪文のように口の中でくりかえして、気持ちを落ちつけながら、どこともわからない高速道路の景色を眺める。 ダイジョウブ、あたしは中国四千年の歴史を誇る『チャイナドール』じゃないの。 「なに、あの娘。ちょっとオカシイんじゃない?」 「ほらほら、学院長センセエが言ってた。あのホンコンの女の子でしょ?」 「すっごいエッチな洋服。どこであんなの売ってるのかしら。ここらへんじゃ少なくとも西口の相鉄にでもいかないと買えないわね」 「やっだ~ッ、乳首がツンツンしちゃってる」 「ひょっとして下着、つけてないんじゃない?」 「まっさかあ~っ、そんなコト」 「でもでも、ほら、ぜんぜんラインが出てないじゃん? ふつーだったらゼッタイ、パンティ・ラインが出るわよ」 「髪の毛、ウェービーはちょっと古いんじゃない? ホンコンでは流行りなのかなあ」 「こんなブタのシッポよりずっとマシよお。厳しすぎるんだから、ウチの学校は」 音も立てずに歩く物静かなシスターに連れられた巫華が部屋に入ったとたんに、少女たちはかまびすしくざわめき始めた。 「......静かにッ! え~っ、みなさんに新しい友だちを紹介します」 想像したとおりの反応に、シスターは困惑の色を浮かべながらも規律正しく生徒たちを制していた。 「香港からはるばる訪れたお友だち、煬巫華さんです。......日本語は出来るわね? あっ、そう。お勉強してきました? はい」 ベルギー人のシスターは流暢な英語で巫華に問いかけながら、ベテランの教育者らしく、視線だけで生徒たちを制して続ける。 「巫華さんは、さきほど羽田空港についたばかりで、まだ日本に慣れないところもあると思いますが......」 ......最近の女の子って、昼間っからこんなかっこうをして街中を歩くのかしらね。アタシの若い頃には、ベッドの中だって、もう少しマシな服を着ていたものだわ。 それに、このチャイニーズ・ガールはニホンの娘と違って、ひどく肉感的なカラダをしている。小さめながらお尻がキュッと張って、それに脚もすんなりのびて。人種によって体型がかなり違うのは、白人のシスターには周知のことであったが、それにしても人騒がせな。 「みなさんと同い年ですから、いいお友だちになれると思います」 ......よく注意しなきゃいけないわね。こんな恰好で学校の中をウロウロされたんじゃ、教育環境がだいなし。 横目でチラチラと眺めながらシスターは思う。 生徒たちのざわめきも、この、ちっぽけな少女のファッションのせいに違いない。ちょっと眼を離してしまえば、オトコの腕にぶらさがって『ディスコ』とか『ニイジマ』とか行ってしまいそうな、そんな娘ばかりだ。 巫華はピョコンと頭をさげて日本式の挨拶をした。 そのかっこうがおかしかったのか、女の子たちがクスクスと笑い声をたてる。どこか悪意を含んだざわめき。 ......なにがいけないの? 先生も、そして生徒たちも、どこかに悪意を秘めているように思えてならない。 しばらく、ニホンゴがよく理解できないフリをしようと、巫華は決心した。 香港で日本語学校に通い、三年も勉強している。英語に比べたら日本語はカンタンだったし、それが日本語の特質なのか、若い女の子のボキャブラリーは極端に少ない。 ニホンゴ特有ののっぺりしたイントネーションや、平板なアクセントを習得するのに戸惑ったが、香港には日本人の旅行者が多い。勉強の機会は多く、最近では日本人のフリをしても気づかれないほど上達している。 けど、ニホンゴがわからないフリをしていると、けっこう内緒話が聞けるハズ。 シスターに案内された席につきながら、巫華は微かに笑みを浮かべるのだった。 「ニホンゴ、スコシ。デモいんぐりっゅワカリマス」 授業のあいまの休憩時間になると、さっそく少女たちが話しかけてきた。 それだけをオウムのように繰り返して、ただニコニコと笑ってみせる。ときどきは流暢な英語で質問を返してみるけれど、香港に観光に訪れる若い女たちと同様、生徒たちは英語が苦手なようだ。 「バッカじゃない? 日本語もしゃべれないくせに留学だなんて」 ......やっぱりね。 巫華のヘタクソな日本語に安心したのか、一人の少女がポツリとそんな言葉。ムチッとした肉感的なカラダをした大柄な少女だ。 「ねっ、ミカさん......って言ったっけ? 日本語の挨拶、知ってる?」 と、うってかわって親しげな態度で、巫華に向かって流暢な英語。 「ワッカリマッス。オハヨウ、コニチワ」 「それは、......あんまり丁寧な言葉じゃないわ。ジャパニーズ・ラングエッジはむずかしいのよ。先生とか、偉いヒトにはこう言うの。いい? 『オマンコヨウゴザイマス』って」 一瞬、あたりの空気がピリッと張りつめるのがわかった。 どうやら笑いをこらえているのは巫華だけらしい。 まわりの少女たちはむしろ、困ったような、凍りついたような表情を浮かべている。そして、一人、嫣然と微笑む張本人。 「......ゆかりさん......」 たまりかねて取り巻きの一人がつぶやきかける。 「なに......?」 事情をしらない巫華にも、そのきつい視線の意味するものはわかった。 ......この娘はクラスの女王様なのだ。 「オ、オマンコ、ヨウゴザイマス......デス? ワッカリマセ~ン」 わざと奇妙なイントネーションをつけて巫華は叫んだ。 我慢しきれずに笑いだす女の子もいる。気がついていないフリをして、巫華は困ったような顔をして微笑んでみせる。 「オマンコヨウ、? オーケー、オマンコ、ヨウ」 「ちょっと発音がオカシイけど。......まっ、いいわ。昼休みにもっと教えてあげる」 そう言い捨てて『ゆかり』という名の少女はくるっと背を向ける。校則にのっとって豚の尻尾のように縛った髪が揺れた。 「ブタ娘めがっ。今に見てらっしゃい」 あたりの誰にも理解できない早口の広東語でひとりごちて、巫華はそのセーラー服の大きな襟を見送る。 休憩時間の終わりを告げるチャイムだろう。ざわめきを破って教会の鐘にも似た音。もっともそれはスピーカーから流れてくる。 巫華にとっては必要もなさそうな英語の授業を聞き流しながら、どんな方法を使うべきか、考えてみたりする。 到着早々だけど、けっこうおもしろそうな街みたいな気がした。 どうやらこの学校の昼休みは四時限めのあとのようだった。英語の文法の眠気を誘うような講義が終わりをつげると、昼食らしきモノが配られた。パンとミルクと、そしてシチューのようなモノ。 ぜいたくな広東料理に馴れた口に合うような代物ではなかったが、しかたない。いっしょうけんめい我慢して詰めこんでいると、例の少女『ゆかり』がやってきた。 「ミカ、......食事が終わったら屋上に行かない? あそこだったら落ちついて日本語の勉強ができるわ」 ......この娘の英語、下品な訛りがあるみたい。 そう、これはアメリカの無教養な黒人兵のしゃべる英語だ。どうもジャパンの教育ではまともな英語は身につかないらしい。 やっとの思いでパンを喉に詰めこんでしまうと、ふたたびゆかりが登場。 ほかには誰もついてこなかった。 ......あら、じゃあ、ひょっとしてチャンスかも。 きっと、邪魔されるのを恐れているのだろう。さっきもつまらない邪魔が入りそうになったことだし、二人っきりのほうが、ヘンな言葉を教えこむには好都合だから。 屋上に出る階段には錠がかかっている。 妙なことにゆかりはその錠を開く鍵を持っている。カシャカシャと階段室に音を響かせて錠をあけ、ドアが解放された。 どんよりと曇った空。 これはきっと『花曇り』っていう天気。だって、日本人がもっとも好む、あの『桜』の花が、いちめんに。 校庭のあちこち、葉のない花だけの樹々のもとには、揃いのセーラー服の女生徒たちが散らばっている。いかにも日本的な景色だと、巫華は思った。 「オマンッコ、ヨウ、ゴザイマス」 さっきの言葉を思い出して、巫華はおおげさなお辞儀をしながら言った。 「ふふっ、えらいわね。もう覚えたの」 得意げなゆかり。 「香港で勉強したんだけど、日本語はとってもむずかしいから。......あの、キャンディー、食べません?」 「あら、ホントは学校にこういうモノ、持ってきちゃいけないんだけど」 そう言いながらも、ゆかりは手を出してきた。 黄色いキャンディー、そして、紅色のキャンディー。 巫華は黙ったまま、ともするとおもてに出てしまいそうになる表情を圧し殺していた。それだけは無害な茶色のキャンディーを口に運びながら。 「サンキューは、だから『アリガト』なんだけど、......ふあっ、なんか今日は眠いわね」 ヘンテコな日本語の講義に、笑いをこらえて聞きいっていた巫華は、彼女のしゃべる、その口調が変化しはじめているのに気がついた。 金網にもたれかかったゆかりは、大きなあくびをもらして眼をこすっている。 どうやら効きはじめたらしい。 黄色いキャンディーは睡眠薬だ。 七色とりどりのキャンディーは、それぞれが特殊な漢方薬で作られている。たとえば緑色のは中国ナマズの肝と雲南省の山椒魚の黒焼きを主原料として作られた、死人ですら勃起するという極めつけの精力剤だし、白いキャンディーは、それを半永久的に持続させる特殊な効果を持つクスリ。......もっとも副作用もある。少なくとも三日間は血圧と脈拍があがりっぱなしで、年寄りが飲んだら命にかかわる。 オンナが緑のキャンディーを飲んだらどうなるのか、それを知るチャンスがなくなったのは残念だったけど、『目的』のためには黄色いキャンディーがいい。 「少し、寝ちゃおうかしら。......一時になったら起こして」 コンクリートの床にぺったりとお尻をつけてしまったゆかりの、最後の言葉はそれ。 どうやら黄色いキャンディーのほうが先に効果を発揮しているようで、まだ紅色キャンディーの効きめはあらわれない。 「ふっ、やっぱり日本人ってお人よし。こんな単純な手口にひっかかるなんてね」 セーラー服のスカートのポケット(ずいぶん妙なモノがついた制服だ)から鍵を抜きとりながら巫華はつぶやく。もう、聞かれても構わない。ゆかりはきっと、淫らな夢の世界を漂っているから。 階段室のドアの鍵をカシャリと締めてしまう。これできっと、邪魔は入らないハズ。 背中を金網にもたれかからせてぐったりと眠りこけている少女は、ときおりヒクヒクと腰を自動的にうごめかせている。 ......ふふっ、やっぱり。 紅色のキャンディーは、どんな貞淑なオンナでもオトコが欲しくてたまらなくなる、強力な催淫剤なのだった。 春とはいっても、名ばかり。 まだ風は冷たい。 とめどもなく淫らな夢の世界を漂っていたゆかりは、その冷たさに眼を覚ました。というのも、風は直接、素肌を撫でている......? ......ああ、ヘン。頭がズキズキして、カラダが芯から燃えあがるみたいに熱くって。 ゆかりは、オナニーを中断することがよくある。 キモチよくなって、イク......っていうその瞬間に、指を止めてしまうのだ。 もうホンのひとこすり。 確実にひとこすりでイッちゃうという、その瞬間に指をピッと離してしまうのがキモチイイ。じれったくって、我慢できなくって、心臓がドキドキ爆発しそうで、胸がカーッと熱くって、アソコはベタベタで。 そんな時の気分にもよく似ていた。 けれど、......ううん、もっと似ているのはイヤらしい夢を見て、たとえばオトコのモノが挿入されようっていう、その瞬間にハッと眼を覚ました、その気分。 ......ああ、ひとこすりでイッちゃうのに。 けれど、身体が動かない。 金縛り。 全裸で呪縛を受けて、ぜんぜん動けないで、ただジリジリと身を焦がす愛欲の炎に焼かれているだけ。 あたし、あたし、どうしちゃったの? きっと、これは夢。 まだイヤらしい夢の続きを見ているんだ。だって、でなけりゃこんなコトって、ぜったいあり得ないコトだから。 桜の花びらが、一陣の風とともにスッと膚を撫でつける。 下腹から肋骨。そして乳房を、くすぐりながら踊り狂う花びらに、剥きだしになった神経がゾクゾクと撫でつけられる。 あっ、イッちゃう......。 それだけでイッてしまった。 金縛りにあって動けない身体が、もっとひどく硬直して。細かい痙攣が襲いかかって脳味噌がドロドロに溶けきった感じ。 でも、でも、こんなコトって。 ゆかりは思い出す。 だって、今まで夢の中でイッたコトなんてないのだ。イヤらしい夢だったら毎晩みたいに見るのに、いつも寸前で、アソコをベタベタに濡らすだけの、不完全燃焼。 ひっ、ま、また来る......。 風がスーッと吹きすぎる、その感覚だけで、またイッてしまう。 ......あたし、あたし、やっぱりヘン。こんな、こんな淫らな夢を見ているなんて。 金縛りから必死に逃れようという、その努力。ゆかりはやっとの思いでまぶたをこじあける。もう、ダイジョウブ。こんな、こんなキモチワルイ夢から覚められる......。 「......あっ、あれ......」 とんきょうな声をあげたのは、校則で禁止されている漫画本を囲んで読みふけっていた、校庭の隅の女の子たちの一人だった。 「なによお、ほら、ページめくって」 まだ気がつかない少女たちは、じゃけんにとりあわない。 「ちょっと、ちょっとお、......ほら、ほら、ア、アレ」 UFOを発見したオカルト坊やみたいな顔をして宙の一点をさし示しているその指先。他の女の子たちもつられて視線を走らせる。 「えっ?」 そして、誰も何も言わなかった。 みんな自分が眼にしているモノを信じられないといった表情。 『こんなコトってあるわけない』と、一人は思っていた。 『きっと二日酔いなんだ。きのうパパの晩酌につきあってビールをコップに一杯半も飲んでしまったから』と、別の一人は思っていた。 けれど二日酔いのせいじゃない証拠に、校庭のあちこちで同じようなざわめきが起こっていた。遠くから走り寄るセーラー服の姿も見られる。 『見ちゃいけない。見たら眼がツブれちゃう、あんなイヤらしいモノ』と、マジメな一人は信じていた。けれどとっても視線は離せない。 「ア、アレ、......ひょっとして、あの、ゆ、ゆかりさん......」 ひどく視力のいい女の子が眼を細くしてマジマジと眺めながらつぶやくひとりごと。 そして、みんないっせいに声を揃えて叫んだ。 「うっそ~っ、信じらんな~いッ!」 十何年か前に失恋した娘が自殺未遂をくわだててから作られた金網は、その高さが二メーター以上もある。 風通しのよい屋上の周囲に張りめぐらされた金網に、校庭のどこからでも確認できる一匹のいけにえがへばりついていた。 ......ふう、それにしてもニホンの女の子って重いのね。 巫華は自らの成果をマンゾクげに眺めている。 鉄筋コンクリート四階建ての崖っぷちと金網とのあいだは、約五十センチほど。そこに彼女を立たせて、服を脱がせて、でもって、パンストをロープがわりに使って縛りつけて。 両の手首、足首。四箇所が、メイド・イン・ジャパンの良質なパンティストッキングの張力で縛られている。ぜったいほどけない。 ゆっくりと、巫華は背後から近づいた。 「いやっ、いやっ、......ああ、あたし、あたし」 さっきから意識を回復しつつあるゆかりが、腰をひねって身悶えている。 ツッ......と、指を滑らせる。 背筋の、ちょうど背骨のあたりに沿って。 「んぐっ、......イク、ああ、またよ、またイッちゃう~っ」 あられもなくお尻が揺れた。 からかってあげたかったけど、巫華は黙ったまま。 催淫剤の効果はバツグンだ。 さっきからわずかな風が剥きだしの素肌を撫でるだけで、しどけなく腰を振って、イッてしまうのだから。ましてや巫華の指先で撫でられたら、ひとたまりもない。 けれどまだ、敏感なブブンへの刺激は避けていた。 むっちりと生々しく白い贅肉。 ジャパニーズ・ガール特有、これが有名な『処女太り』というものだろう。全裸になった処女太りを見るのは初めての巫華だったが、圧倒的なイヤらしさには好奇心をそそられる。 パープル・パールのマニキュアを施した爪の先で、その白い尻に文字を書く。 ......『揉』 爪の尖端が敏感になってしまった皮膚を滑るたびに、ゆかりはヒステリーじみた絶叫。だから巫華は身を隠さなければならない。 さすがにオマヌケな日本少女たちも、屋上で起こっている出来事に気がついているから。先を急ごう。 「ああっ、......イヤイヤッ、なにを、なにをするのッ、ああ、アナタは誰ッ?」 これもまた校則で厳しく定められている髪の毛。 肩にかかるほど長い髪のときには、必ず三つあみに結ばなければならない。そのために二つに分けて結ばれていた髪の毛をほどいて、巫華は金網に縛りつけてしまった。背後を向くことすら出来ないゆかりは、ただ前を見ているだけ。 巫華の指は尻の裂けめをもぐっていった。 ふっくらした大陰唇が左右から合わさって、亀裂を作っている。よく脂肪がのって、複雑な内部を保護するかのように。 金網の荒い目からもぐりこませた手の二指で、それを開いた。 とたんにトロッと流れでる愛液。 「イヤッ、イヤッ」 巫華は指先にからまる粘液を舐めてみた。酸味がまさった、腥い味。むしろ味は強いほうだが、けれど紛れもなく処女。 意外だった。 その下品な黒人訛りの英語からして、六本木あたりをウロついている太すぎる陰茎に馴らされたガバマンだとばかり思っていたのだ。 充血しきった唇がはぜて開く。 ゆっくりと撫でさすっていると、たまらず腰が揺れて邪魔になる。 「ヒイ、ヒイッ、ヒイイッ、......もう、もうダメ~っ!」 太腿までねっとりと愛液に濡れて、立て続けに襲ってくるオルガスムスの波に翻弄されながら必死にのがれようとする腰。 あたりをまさぐりながら、巫華はやっとクリットを発見した。 この位置からだと反対側。 しゃがみこんで下から、クリットへのアタック。つまんで、くじり始めた。 ......クリトリスは小さなペニスである。ペニスに存在する快楽神経組織を、わずかな、数百分の一、数千分の一の表面積に集めた『精密』すぎる器官だ。 ともするとオトコという動物は乱暴だと嫌われる。 その、いちばんの原因はクリトリスの特殊性を理解できないからだ。 ひたすらクリトリスの包皮を剥いてしまい、ダイレクトに撫でつけたがる。だがそれは精密器官を狂わせるだけの作用しかもたらさない。 もちろん巫華はそんなコトは承知のうえ。 包皮に隠されたままのクリットを愛液まみれの指先でこする。強すぎず、ただ触れるだけの動きだ。 「わあ~っ、わあ、ああ! あ~っ!」 絶叫が見上げている少女たちを驚かせていた。 横手の階段室のドアがガシャガシャ鳴っているのに、巫華は気がついた。だが鍵がなくて開けられないらしい。 ビクンビクンと、金網につながれた肉体が痙攣。もう触れていないのに。ちょっとだけ、また触れる。 「イク~ッ! イッちゃうッ!」 びしょ濡れのセックスを、グイッと宙に向けて突きあげるようなポーズで、またイッた。 ......これなら。『揉』のテクニックを試してみたらオモシロイかもね。 巫華はそう思った。時間もないことだし、すぐにとりかかる。 探りあてたクリットを指で摘んでクリッ、クリッ。もちろん指先は愛液まみれだから、やたらに滑りが良い。 小さなペニスであるクリトリス。 巧みな刺激にたちまち勃起し、微妙な指のスラストによって耐えがたく腫れあがる。風が吹いてさえ昇りつめるほど敏感になった肉体に、それはあまりに過激な刺激だ。 「......はっ、はああっ............!」 ゆかりは、もはや声も出ないほどの快感の渦に呑みこまれていた。 血液が逆流して全身が総毛立つ。 毛穴の一つ一つがバカみたいに開きっぱなしになり、陰毛も一本一本がピンと尖って逆立ったみたいな、そんな感覚。 けれど拷問はまだ。 呼吸が完全に止まった。 ングッ......と息を呑んだところで胸がいっぱいになり、心臓だけがドキドキと激しく脈打ち、身じろぎも出来ない状態。 「今、楽にしてあげる。ほら、......ほら」 どこからか声が聞こえてくる。 ......アナタはダレ? ああ、誰でもいい、早く楽にして、殺して、アタシ、もう耐えきれない。 不整脈の中でゆかりは声にならない叫びで必死に訴える。 クリットはズキズキと狂ったように膨れあがっているのだった。 「鍵は誰が? 誰が持っているのよお、早く、早くう~っ!」 「だって、だってゆかりさんだけよお。後は用務員のオジサンか校長センセのシスターしか持ってないじゃないの」 「じゃあ、早く、早く借りてくるのよ。どういうわけか鍵がかかっていて、ドアがあかないんだもん」 「お待ちなさいッ! これは、これはいったいどういうコトですカ」 「あのあの、あの、ワカリマセ~ン」 「鍵が、鍵がなくなっているんですわ、困った、困った」 「えっ? えっ? ......ゆかりさんだけじゃないわ、誰か、誰かいる!」 「見えないッ、見えないじゃない。誰もいないわ」 下界は阿鼻叫喚の地獄の様相を呈しているといっても良かった。 金網に縛りつけられた美少女の直下を中心として、何百人もの人間が集まりはじめている。生徒と、そして教師であるシスターと。 ごく少ない男性である老人の用務員はただオロオロと歩きまわるだけ。逞しい身体をした体育教師は、腕組みのまま好色げな視線を向けてニタニタしていたが、生徒に詰問されてあわてて弁解に忙しかった。 「でも、でも、なんでゆかりさん一人で屋上に?」 「そうよ、なんで一人で金網に自分のカラダを縛ったりしたのよ」 「祟りよッ、これはゼッタイに背後霊の祟りなんだわ」 二人の男性が正視できないでいるのを除けば、あとの数百人かの視線はそのいけにえの少女の裸身に釘付けだった。 それは、奇妙な見世物だ。 あられもない全裸の処女が、まるで肉欲に身を焦がした中年女のように尻を振って悶えているのだから。しかもそれが、あの『ゆかり』だというのだから、興味は尽きない。 元町商店街で古くから続く老舗である『テーラー北澤』といえば、知らない者はない。マッカーサーがワイシャツを三枚、注文したことでも有名だが、少なくともこの学園に限っていうなら、もっと有名なのは『ゆかり』の存在だ。 東京の目黒、水道橋周辺と並んで、日本三大女子高密集地帯として有名な、このヨコハマ山手でも、もっともレベルの高いことで知られる『聖ミカエラ女学院』。 レベルが高いのは、別に成績だけの問題ではない。 成績が良くなければ入学できない学校はいくらでもある。だが、ミカエラの場合は成績以前の条件がむずかしいのだ。 少なくとも、どこかの学校のように、八百屋の娘や魚屋の娘でも、金さえあれば入学できるという学校ではない。入試に際しては事前に戸籍謄本の写しの提出が求められ、それを元にして徹底した家系調査が行われる。 ゆかりという少女はレベル三でかろうじて入学が許された。(ちなみにレベル一は皇室、旧華族関係。レベル二は大企業のオーナー。レベル三は大企業の社長、会長クラスである) それには地元であるということ、某国会議員の強力なコネが効いたということもあり、なにかにつけてレベル三のコンプレックスを意識させられるゆかりとしては、せめて女王然とふるまって自己主張するしかなかったのだ。 「ギャッ、ギャア~ッ!」 ふたたび絶叫が轟いた。 あるいは、観察力の鋭い少女の瞳には、体格の良いゆかりの股間に茂ったブッシュの中にうごめく白い指が見えたかも知れない。 けれどほとんどの少女たちは、ゆかりの絶叫に気を奪われていた。 というのも、信じられないような言葉を口にしはじめたのだ。 「オシッコが、......ああ、オシッコが出ちゃう~っ!」 しずまりかえった校庭に流れる悲鳴。 だが、誰もその場から動こうとはしなかった。まさか、と思っていたのか、あるいは呪縛でも受けていたのか。 ただ立ち尽くす群衆の真上で、一人の美少女の堰が切って落とされようとしているのだった。 クリットの包皮をズルッと剥いた巫華は、愛液でぬめる指先で赤剥けになった亀頭部をツンツンと突っつき始めた。 巫華も、たまにはオナニーに耽ることもある。 ポイントは適確に掴んでいるし、テクニックだって、自慢の『揉』がある。 『揉』というのは、日本語で説明するならば『いじる』とか『くじる』とかいう意味だ。『いじくる』なんていう言葉もあるらしいけれど、その三つがどう違うのか、巫華にはそこまでの語学力はないが。 オトコのモノを『揉』する場合だったら、かなり多彩なテクニックがある。特にまだ、あるいはもう、勃起していない状態のモノには、様々なテクニックを施せる。 てのひらに包みこむようにしてやわやわとリズミカルに揉むのは言うまでもなく、半立ちのモノならば親指とひとさし指で作った輪を使ってスラストするとか。触れるかどうかといった、微妙なスラストには、どんな屈強な男でも悲鳴をあげてしがみついてくる。 そんな『揉』のテクニックの一つに、カリクビのところで摘んでアタマをツンツンと叩くテクニックがある。 ゆかりに、そのテクニックを応用した。いうならば『媃』とでも書くべきなのだろうか。愛液のぬめりは、それをいっそう強力なものに仕立ててくれた。 「オシッコ、出ちゃう~っ!」 その言葉を巫華は満足げに聞いた。 とどめにひとさし指をズブリと肛門に突き挿して、裏側から、てのひらで下腹部と、裏表から膀胱を圧し潰すようにする。 「......はあっ、あっ、......出る、出る......」 途切れ途切れの、声にならない吐息を耳にしながら、巫華はクルッと背を向けてその場を立ち去って行くのだった。 オトコより膀胱の小さいオンナにとって、オシッコをガマンするというのは努力の必要なことだ。 それにオルガスムスの快感と、我慢した尿意がこらえきれなくなって思いっきり放出するときの快感とは未分化のものがある。 ただでさえ、キモチよくなるとオシッコが出そうになる......という女は多い。 まだ男と寝たことがない、ゆかりのような少女の場合、オナニーでオルガっても、それは一回だけ。立て続けに何度もイクことなどは、経験がないはず。 それを、強力な催淫剤と巫華のハンド・パワーによって何度も絶頂に押しあげられて、精密だったクリットはすっかり狂って暴走している。 紅色キャンディーの副作用はオシッコがしたくなること、というのも、計算の上のことだ。アソコがムズムズすると、どうしてもしたくなる。 つまんでくじる、トドメの『媃』は、巫華の経験則から生みだされたもの。 けれど、それでもゆかりは必死に我慢していたのだ。 これが、単なる淫夢にしかすぎないことは承知のうえで、でも、夢の中でオシッコしてしまうと、オネショするんじゃないかと、幼稚園のころまでオネショをしては怒られていた潜在意識が、尿道括約筋を緊張させていたのだが、ナマで剥きだしのクリットに触れられたショックで、一瞬、意識を喪失してしまったのだ。 オルガスムスでこわばりきっていた全身の力がフッ......と抜けてしまい、ぐったりと虚ろな意識の底を心地よく漂って、そして、気がつくとチョロ、チョロ......っと、流れ出してしまっていた。 ......ああ、ダメ、もう、もうダメ。 そう思ったとたんに括約筋が緩みきってしまった。 激しい勢いで、黄金色の液体があふれた。 とたんに、わかったのだ。......これは、夢じゃない。いつも見る淫らな夢じゃなくて、リアルな現実そのもの。群衆に恥ずかしい姿をさらしているのも、我慢しきれずに黄金のシャワーをしとどに放出しているのも、みんなの目の前で何度もイッてしまったのも、みんな、みんな現実。 ゆかりは泣いていた。 泣きながら、けれどももう止まらないオシッコを、クラスメートたちの待つ下界に向かってジャバジャバと浴びせかけるのだった。 |
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