新連載! トワイライトタイム

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  トワイライトタイム

      目 次
第 一 章 ライディング・ハイ
第 二 章 和泉 萠
第 三 章 いつものキスよりちょっと先まで
第 四 章 ふたたび別荘へ
第 五 章 ライダース・ブルー
第 六 章 茉莉子の決心
第 七 章 峠の出来事
第 八 章 喪 失
第 九 章 メルセデス・ベンツ
第 十 章 クリスマス・プレゼント
第十一章 二十三時五十七分
第十二章 ふたりだけのクリスマス

    あとがき

富士見書房というところから出版された書き下ろしの青春小説で、依頼としてはちょっとエッチなジュブナイルという感じで、当時、富士見書房は富士見ロマン文庫というバリバリのポルノを出していたんだが、それとは違うらしい。まぁ、そのあと、くりいむレモンのノベライズを出すようになって方向性は決まるんだが、その前の、方向性が定まらない頃です。とりあえず、おいらとしては青春小説、オートバイ物でどうだろう? というような企画を出して、やっと書き上げたら、富士見書房はボスが角川春樹で、校正刷りを読んだらオートバイ物なのでえらく気に入ってしまったようで、いきなり5万部出版したw いつもの倍、おいら史上最高額の「一冊200万」という印税を手にして、以降、おいらは角川春樹の悪口は言わないようにしているw


   第一章  ライディング・ハイ


 オートバイはまるで抱き心地のいい女の子だ。
 熱く煮えたぎるDOHCの情熱を太腿にかかえ込んで、滑らかな肌をしたガソリン・タンクを抱きすくめて、機械と人間とが幸福な合体を遂げる。
 ひとつになって思いのままにその身体をあやつれば、もうひとつ、別の世界への扉が開かれる。そう、渦を巻いてめくるめく、風に包まれたもうひとつの世界に。
 .........冷ややかに空気が澄んで、空は遠く、青かった。きのうまでの雨があがって、眩しく照りつける午後の光に、街も道もキラキラと原色に輝いている。
 街並みを抜けると、すぐに箱根への登りに入る。最初の坂を登りきって、コーナーを曲がれば、広くなった道のせいで視野がひらけた感じがした。
 隣を走っていた加納淳が、スロットルを開いた。ちょっとした手首のひねりで、金属的な2ストの排気音がクィーンと空気を引き裂く。チャンバーから青白い煙を吹きあげて、レーサー・レプリカが先行する。
 山上祐一もすぐその後を追っていた。
 箱根への道は、そうやってほとんど一直線のストレートから始まる。
 こんな明るい光を浴びていると、まるであれが嘘だったように思えてくる。あの物悲しいような氷雨に打たれながら、茉莉子と過ごした時間が。
 きのうは雨だった。
 長く続いた雨のせいで、世界中が水びたしになってしまったような、そんな午後。傘に隠れて茉莉子の肌は紅色に染まっていた。


 学校のかえりにいつも時を過ごす公園で、いつものように何度も唇を重ねあって、暗くて静かなそこは、ふたりの隠れ家なのだ。
 はじめて唇を重ねたのは、何度めのデートだったんだろう。その公園の茂みに隠れるようにして夢中で唇を奪って、そのあまりに突然の出来事に、茉莉子だって避ける余裕もなかったはず。
 慌てたせいで歯と歯がコツンとぶつかってしまったりして、けれども、うつむいた茉莉子がやっと髪の毛に隠れていた顔をあげて、それから祐一を見て、不思議に明るい表情でクスリと笑ってくれたんだ。
 茉莉子は確かに好きでいてくれるはず。でなければあんなに明るい笑顔は見せないはずだから。
 なのに今まで、ふたりは永遠に続く序章をくりかえしているのだ。キスから先は遥かな道のりだった。
 世界中が水びたしになったような公園での、あのキスだってそう。まるで出口を見つけられない迷宮だ。
 二車線の道は切り通しのような低いところを走っている。そこまで来ると淳はググッとスピードを落とし、もちろん祐一もスピードを落とした。
「ホットドック、食ってくか?」
 シールドをはねあげた淳が聞いてきた。
「オッケイ! トワイライトタイムスの二〇センチかい?」
 秋も深くなって、走っていても革のジャンパーを通して冷たい空気がしみる頃になると、トワイライトタイムスの熱くてまずいコーヒーが、むしろ恋しいような気がする。
 箱根の中腹のトワイライトタイムスは気取った名前のわりにはごく、つまらない店で、ジュークボックスにモータウンのR&Bやプレスリーのシングルが入ったりしているからって、感心しちゃいけない。単に二〇年前からそのままになっているだけだ。ホットドックが客の食欲に応じて、十五、二〇、三〇センチとあるのが自慢だっていうそれだけでも、たいしたことがない店だってわかる。
 アメリカ製のおおざっぱなパーコレーターで沸かした大味のコーヒー。ただ煮えたぎって熱いだけがとりえだ。それに何杯でもおかわりできる。
 そうだトワイライトタイムスのホットドックだ。そうだな、朝メシ食ってからそれほどたってないから十五センチでいいか。
 愛しているから自分のものにしたいって思うのは、つまらないワガママなんだろうか。 気が狂うような熱っぽいキスを数えきれないほど確かめあって、セーラー服のなかのふくらみかけた乳房をおしつぶしながら抱きすくめ、女の子の柔らかさ、暖かさを覚えてしまったら、もう忘れられない。
 最初のオトコになりたい。
 いつか彼女が体験するはずの、少なくともその最初のオトコになりたい。
 あんまりゆっくり走っていると、そんなことばかり考えてしまう。こんな明るい陽射しに包まれているのに、きのうの記憶を反芻してばかりいる。
 祐一のすぐ横を、白い乗用車がわざとらしいパッシングを浴びせながら追い越していった。フル加速でリアを沈めて、助手席には若い女を乗せたソアラだった。
 パランパランと情けない排気音をばらつかせて流している淳が、ニタッと笑った。見る見るうちに遠ざかってゆく練馬ナンバーを眺めながら、けれどもふたりともまだ、ノロノロ走っている。
「やるかい?」
 祐一が聞くと、淳はシールドを降ろしながらうなずく。どうやらホンキらしい。
 カーブがもうひとつだった。
 ゴチヤゴチャと立て込んだあたりを抜けると、突然、見晴らしがよくなる。そこにさっきの白いソアラが停まっていた。そしてそのまわりに何人かの制服。
 スピード違反の取締りだった。
 このあたり直線が続いてスピードが思いっきり出るところ。しかも見通しが悪くって、その先の空地に隠れている警察官の姿が見えない。
 日曜日ともなると、毎週のようにやっているのだった。
「ははっ、......バーカ!」
 横をすりぬけざま、淳が罵声を浴びせた。ソアラの男の顔色が変わって、けれども警察官に停められているのに追いかけることも出来ない。
 カーブをふたつばかり曲がったところで二台のオートバイが停まる。少しだけ道から外れてちょっとした空地に隠れるようにして、さっきのソアラを待とうという体勢だ。淳はパラランパラランと軽く空吹かしをしていた。
 淳はソアラを見るとムキになって仕掛ける。好きだった女の子をソアラに乗った大学生に奪られたからさ......なんて言ったこともあるけど、よくそんな冗談を言うから、どこまで本当なのかわからない。ああいう軟弱なクルマは嫌いなんだろう。
 何台か違う車が続いたあとで、やっとカーブの出口からソアラの白い姿が見えてきた。エンジンの回転をあげておいて、祐一はそれが通り過ぎるのを待つ。
 気がついたらしい。ソアラの男がふたりの姿を横目でチラッと見る。
「オレから行くぜ!」
 そう言い捨てざま、クラッチをミートすると、祐一のオートバイは弾かれたように飛び出していた。


 ライトを点灯した。
 スルスルと前に出て、ソアラに寄って行く。
 しばらく離れたところで淳が様子をうかがっているのがわかった。彼はライトを点けずにごく普通に走っている。
 ピッタリと寄ったところでソアラが気がついたようだった。カーブを抜けたところでスピードをあげる。
 けれどもさっき違反でパクられたばかり。それ以上は出せないでためらっている。
 速くない四輪にピッタリ付いて走るのはかなり神経を使う。相手がいつ、イヤガラセで急ブレーキを踏むか、わからないからだ。
 バックミラーにはライトがチラチラしているはずだ。
 ここで相手が左に寄ってくれれば、それ以上仕掛けるつもりはない。けれどもさっき淳に笑われたのが脳裏に残っているのか、ソアラがムキになった。
 スピードをあげる。
 アクセルを半開きにして、祐一は付いていった。
 あまり上手くないドライバーだ。
 おまけにノークラッチ特有のメリハリのない走りかたをしている。
 トワイライトタイムスはもうすぐだ。そろそろケリをつけようか。そう考えているうちに、ライトを点灯しながら淳のオートバイがスッ......と寄ってきた。次のカーブを抜ければしばらくは直線。そこで決めるつもりらしい。
 このあたりに多い、ちょっと難かしい複合カーブだ。
 見かけにダマされて突っ込むと、奥でキツくなっていてあせる。
 二台でブレーキングしながらカシャカシャとシフトダウンしてコーナーにそなえた。淳がアクセルをあけながら親指を立てる。
 練馬ナンバーのソアラはやっぱり道を知らなかった。
 複合カーブに思いっきりオーバースピードで突っ込んでしまって、ハンドルを切りながらもブレーキからまだ爪先を離せないでいた。
 スピン寸前の状態だった。タイヤが一瞬ロックしたのが後ろからでもわかる。キリキリ鳴って、路面に黒く跡がついて滑っている。アウトに膨らんで横があいたのを、待っていたように淳が抜け出した。
 淳は左側から、そして祐一は右側から、二台同時にライトを激しくパッシングしながら追い越してゆく。
 ミラーに映っている白い車体は動かなくなってしまった。どうやら停まってしまったらしい。スピードを落としながら振り向くと、ダッシュボードに手をついて眼を丸くしている女の顔が見えていた。
 もしかすると、沼津インターで降りて、箱根を走りながら口説いて、帰りには御殿場インターあたりのモーテル......なんて考えていた男のプランをだいなしにしてしまったかも知れない。女はそんな顔をしていた。
 すぐにトワイライトタイムスだ。
 二台並べてオートバイを置いて、入口をくぐろうとした時、ソアラがゆっくりとやって来た。一瞬ふたりで緊張したけれど、結局は停まらないまま、ライトを二、三回パッシングさせて行ってしまった。
「やれやれ、これで八台目だよ。またシールを張らなきゃ」
 安心した淳が、そう言って笑った。
 箱根でソアラを仕留めるたびに、淳はオートバイにシールを張っている。レーサー・レプリカのマシーンのガソリン・タンクには、妹から取りあげたキキ&ララのシールが奇麗に並んでいるのだった。
 まだ昼ちょっと前の店には、他に客はいなかった。マスターがテーブルに新聞紙をひろげて熱心に見入っているだけ。
「マスター、コーヒーと、それに十五センチ!」
「おなじくね」
 顔見知りのマスターに声をかけて、秋の陽射しがきらめきながら入る、窓ぎわのテーブルを占領した。
 走ったあとの解放感っていうヤツが、祐一は好きだ。
 走っている最中には何も考えてはいない。ただ、次のコーナーをどうやって抜けるか、それだけしか考えていない。
 けれどもオートバイを降りると色々、考える。
 ピリピリと神経を尖らせていた反動なのか、いちばん思い浮かぶのは縁起でもない、事故で死んでいる自分の姿だ。あの時ああしていなかったらこうなっていた。ああなっていたか。
 そんなことばかり考えて、けれどもフッと気がつけばちゃんと生きている。
 こうやってコーヒーの香りを嗅いで、十五センチのホットドックを待っている。
 こうやって足をのばして、自堕落にのんびりして、茉莉子のことを、いくらでも考えることができる。いまにも泣き出しそうな、悲しそうな顔をして祐一を見ていた茉莉子のこと。雨のなかで髪の毛が細かい水滴に濡れていたっけ。
 そうだよ、まるで自分が『おあずけ』さえ出来ない頭の悪い犬になったような、そんな悲しい気分でいたんだ。


「あたし、こうしてるだけで幸せなのに............なんで? なんでなの?」
 抱きすくめた腕のなかで、言ったんだ。公園の、人通りのとだえた場所。そこは道からはいくらか引っこんでいる。だからよっぽどのモノ好きじゃなきゃ通らないし、見られることもない。
 この公園を通ると駅への近道になっていた。それで学校の帰りにも、たいていはここを通ってゆくことになる。もっとも佑一と茉莉子の場合は、近道を通ったために一時間は余計にかかったりすることも多い。
 茉莉子は頭の上から降りかかってくる雨に濡れながら、そう言ったんだ。
 なんでなの......って、答える言葉があるわけないじゃないか。キミを好きだから、キミが欲しいんだ。
 この季節になると、やたらに落葉が散る。学校の行き帰りの通学路にも、鮮やかな黄色をしたイチョウの葉がとめどなく舞いおどって降る。それを踏みしだきながらオートバイで走るのは、気持ちがいい。
 けれどここに降ってくる落葉はむしろ茶色っぽくて濡れている。しなやかに伸びた茉莉子の黒い髪の毛にも、だらしなく一枚、二枚と張りついている。
 祐一はそれを取ってやりながら聞いたのだった。
「オレのこと、嫌いなのか?」
「そうじゃないってコト、知ってるくせに」
 粗い目をした手編みのセーター。クリーム色がかったピンクの、そのセーターの胸はほのかに、けれどしっかりふくらんでいる。喉が乾くような欲望。けれどやっぱり、いきなり手を出すのもはばかられて、そう、こうしていつものように結局なにもできない。
「ねっ、こうしているだけでシアワセよ。あたし」
 それが彼女の口癖。その言葉のせいでいつも気分がはぐらかされてしまう。
 ぴったりと身体を寄せて、腕を祐一の背中にまわしてからめてくる。髪の毛がちょうど鼻先になって、なまめかしいような女の子の匂いが刺激的なのには、彼女は気がついていないんだろうか。
 茉莉子はそんなに背が高くない。祐一と並ぶと肩よりちょっと上くらいだろうか。
 だから抱きしめるとどうしても髪の毛の匂いを生々しく感じることになってしまう。女の子の匂いと、それにシャンプーの匂いと、むせかえるような熱い欲望に胸が苦しくなってしまうんだ。
「受験.........、もうちょっとじゃない。頑張らなくっちゃ」
 カサッと物音。すかさず茉莉子が離れてしまう。けれどそれは気まぐれな落葉のいたずら。誰かが通ったわけじゃなく、ただどこかで枯葉が舞い散っただけのことらしい。
 あたりが静まりかえるのを待って、祐一は茉莉子のそばに近づいてゆく。彼女はふりかえらない。
「好きだよ。茉莉子のこと、ホントに好きなんだ。だから............」
 だから欲しいんだ。
 けれど、これ以上拒絶されるのが怖くて、いえない言葉だってある。さっきそれで気まずくなったばかりだ。
 後ろから抱きすくめた。それで、彼女の乳房のふくらみが腕のなか。左手は胸のふくらみの上、右手はふくらみの下。ちょっとだけずらせば、熱くほてったふくらみを、もっと生々しくてのひらに感じられるはずなのに、それさえできないでいる。
 けれども息づいている十五才の少女のときめきみたいなものは伝わってくる。カシミアのセーターに包まれてぬくもった熱い体温といっしょに。
 悪くない気分だ。
 この十五才の少女はなんといっても自分のモノだし、こうして静まりかえった公園の森のなかで抱きしめることだって出来る。
「愛してるんだ」
 わずかに手の位置をずらして茉莉子の胸のふくらみ具合を確かめながら。
 けれどそれが自然な仕草だって、思われるように注意しながらだ。
「でも.........。あたし、まだ十五才よ」
 腕のなかで少女がふり向いた。見あげて困ったような顔をしている。
「祐一さんはもう十八だし、それに......、卒業したら東京の大学に行っちゃうんでしょ?それはわかってるんだけど」
 なにかにビックリでもしているみたいに、大きく見ひらかれた茉莉子の瞳。その色にはほんのちょっとだけ、甘い茶色が混じっている。
「怖いの?」
「............うん」
 そう言われてしまったらもう、言葉がないじゃないか。
「ゴメンね。いくじなしで。でも、でもあたし............」
 永遠につづく出口のない関係。
 うつむき加減に下を向いてしまう茉莉子の顔を、あごのところに指をそえてあげさせる。軽くひらいた唇が、まるで祐一のくちづけを待っているように濡れている。ピンク色をした血色のいい唇。
「キスしようよ」
 祐一はそう言った。
「もう一度キスして、それでこの話はオシマイ」
「ウン」
 無理して笑ったその顔が、どちらかというと子供っぽい。茉莉子っていう女の子は、こんなふうに、時として子供っぽく、時としてオトナっぽく、祐一はなんだか不思議に思うのだ。女の子って、みんなそうなんだろうか。
 唇がうすく開いていた。わずかに開いたそのあいだから、歯並びのいい白い歯がのぞく。さいごに見えたのはその白い歯。眼をとじて、祐一はそっと唇を合わせる。
 柔らかくって、生暖かい。
 そっと触れた少女の唇は、こんな冷たい雨の日にも、柔らかくぬくもっていた。
「ん............」
 歯と歯のあいだを、祐一は舌をつかってこじあけようとする。くぐもった声をもらして、けれどこらえきれずに受け入れてしまう茉莉子。
 いっしょになって舌をからめてくる。口の中でもつれあう舌と舌。そうだよ、茉莉子だってオレのこと、好きなんだ。ただ、ちょっとだけ怖がっているだけなんだ。まだ知らないオトナの世界を怖がっているだけなんだ。
 離れてから気がついた。頬を少しだけ紅色に染めている。
 上気した顔で、その瞳で祐一をただひたすらに見つめて、だけどなんで、こういう時の女の子って、こんな顔するんだろう。火照って上気した素肌が妙に可愛らしくって、見つめられるとつくづく無力な自分になってしまう。
「帰ろうよ」
 声をかけると、黙ったままでコクンとうなずく。
 先に立って歩いている彼女の姿を、見るともなく見ながら歩く。手編みのセーターに、膝の下までの長い白いスカート。茉莉子はなにも言わず、そして祐一もなにも言わなかった。
 公園をでて街を歩く。駅までのわずか五分間。
 いつのまにか夜になってしまう雨の夕暮れのうすくらやみの中、彼女の乗るバスが駅前のロータリーで待っていた。けれど茉莉子は乗ろうとしないで困ったように祐一を見ているだけ。街をゆきかう車はちらほらとライトを点けはじめている。
「どうしたの?」
 気になってしまう。こんな顔されて、ただ黙って立ちすくんでいられても困る。
「.........あの」
 さっきキスしたばかりの唇が、震えるようにひらいて、言葉がそこから出る。
「嫌いにならないでね。............いつかきっと、......いつかきっと」
 いまにも泣きだしてしまいそうな表情。
「うん、いいよ............。わかったから」
 だって、そうとしか言いようがないじゃないか。こんな場合には。

 受験とガールフレンドとオートバイと、この三次方程式はどう解いたらいいのか、そんなこと、わかるわけがない。
 でも、そうさ、きっと大丈夫。あの娘はぜったいにオレのもの。ただ、女の子に必要な勇気が、まだ十五才の彼女にはほんのちょっと欠けているだけのことなんだ。
 とにかく、女の子っていうヤツはオートバイのようにはうまく行かない。
「どうする? これから............」
 淳は小田原に用事があるらしい。親戚のところにとどけ物をするとかで、そんなものにつきあってもしょうがない。
「オレは、.........そうだな、乙女峠をまわって、東名高速に出ようか」
 同じ道から帰るのもおもしろくない、芦ノ湖をそのまわりに沿って走って、乙女峠のトンネルを抜ければ、御殿場はすぐだ。
「じゃあ芦ノ湖までは一緒だな」
 湯気をたてながら、ホットドックが届いた。とりあえず、考えごとは中止だ。
「しかし、やっぱりお前のオートバイは速いぜ。さすがにレーサー・レプリカだなあ」
 腕もさることながら、2ストのエンジンの瞬発力は桁外れだった。それにメカに強い工業専門学校の生徒だから、淳はだいぶいじっている。
「だめだめ。エンジンいじくり過ぎて、ビンビンに回してやんないとプラグかぶっちまうんだ」
 そう言いながらも、彼は満更でもなさそうな顔をしていた。

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イラストのバイクは「750cc(ナナハン)キラー」?

名機と名高いヤマハ発 RZ 350か
1.6倍したら4スト560cc並の戦闘力ニダ
相対的な軽さを生かせば充分戦えるか
軽さはジャスティスω

アテクシ個人は2ストは好かねえω
前に行かれるとオイルが飛んでくるんだよなー
先に行かせるか抜くかだの

自称のんびりツアラーだからバトルじゃなくて旅が非日常なんでな‥‥

さて

【 YAMAHA RD350LC PRO - AM Race Series - Donington Park 1983. 】

https://www.youtube.com/watch?v=pgGz00VTKgQ

【 RZ250 RZ350 YAMAHA RZ 時を超えた傑作 4L3 4L0 rd250lc rd350lc rd400 】~スカパーで放送された「時を超えた傑作」RZ250~

https://www.youtube.com/watch?v=Wm8O3EOly4E

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