ジャマイカ

川　平　和　秀
　　　　資格
CQI認定Qアラビカグレーダー
IIACカフェ学マスタープロフェッショナル
IIACエスプレッソイタリアーノトレーナー
　　　　審査員
ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ
ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ
エスプレッソイタリアーノチャンピオン
国際カフェテイスティング競技会

スペシャルティコーヒームーブメントの中においては高いだけのコーヒー、昔凄かったコーヒー、みたいなバッドイメージが多い気がしますが、抜群の甘味と厚みのあるボディ感を産出するエリアで世界最高品質のコーヒーのひとつです。
最良の物は日本では一社のみ取り扱いがありますが社外には出てきません。
高いコーヒーというイメージが先行するブルマンですが、日本のコーヒー店ではせいぜい100g2000円前後のものが多く現在その程度のプライスで手にできるブルマンは国際市場で余った低級品になります。

ブルーマウンテンは様々な逸話があるコーヒーでもあります。
ブルーマウンテン山脈の標高〇、〇〇〇メートル以上の高地で収穫されるコーヒーであるだとか、ブルーマウンテンより標高が低いエリアで取れたものがハイマウンテンであるだとか...
まずハイマウンテンという名称のエリアもコーヒーも存在しません。
歴史的にどのように伝播したのか分かりませんが、影響力のある人が広めたのであろう偽情報です。
ブルーマウンテンという名称を使用できるのはブルーマウテンエリアで収穫されたコーヒーになります。
要項に最低標高の記載はありますが400m程度です。
ジャマイカの緯度での栽培農地としては比較的低地からも産出されていることになります。

ブレンドしなくてもバランスがいいコーヒーみたいな説明を古い本でよく目にしますがスペシャルティコーヒーにおけるブレンドの考え方ではナンセンスな表現です。
コモディティコーヒーの中でも特に低品質なものを多用するマーケットでのブレンドの考え方は欠点を補い合う手法が一般的ですがスペシャルティでは良いもの同士の相乗効果を狙う手法になりますので根本的に考え方が異なります。
ただしブルーマウンテンの特徴として素晴らしいバランス感があることは確かで最高の物になるとSCA評価で9点を超えます。

英国王室御用達のコーヒーとも紹介されることがあります。
真相の程は分かりませんがロイヤルワラントの製品は名品揃いですね。
私もトゥルフィット&ヒルのレザー等愛用しています。

最高級品の証として麻袋ではなく樽詰めになっている...
これは建前上後には引けないので今でも樽詰めですが、歴史的には麻袋の調達が困難であった国ジャマイカで樽ならたくさんあったことが理由です。
実際樽詰めにアドバンテージは無く優れたシッパーはグレインプロを使用しています。
その上を行くのはアルミ包材を真空処理もしくはエージレス詰めで空輸している会社もあります。
輸送コストの高騰で生豆はどんどん高くなりますが、輸送管理はコーヒーの品質に直結しますから品質本位で考えるならコストを惜しまずやるべきです。
結果焙煎豆の値段は高額になりますが高騰理由を建設的に考えることが出来ます。
良いものを売るに相応しい人材を育て上げることにも繋がります。

しかし言うのは簡単で高額商品を売るのはとても難しいですが、そもそもマイクロロースターに価格競争で勝ち目はありませんから、高い商品を売る高い技術を養う以外道は無く存在価値もありません。

ジャマイカの首都はキングストン、レゲエとストリートミュージシャンの街です。
ガンジャの香り漂うボブのミュージアムに行ったり本物のジャーク屋台の味に感激したり初めて聞くパトワ英語に悪戦苦闘しながらもここに住もうかなと思うほど居心地のいい街でした。
しかしぼくはこの街で事件に遭います。
とあるスーパーの駐車場のトイレで3人のギャングに取り囲まれ、まあ殺す気はなかったのだと思いますが銃を向け手て金を要求され、所持金は数百ドルありましたが旅費に困るので冷静に、いくらいるの？
と聞いてみたところ＄100！
え！安い！と思いましたが表情を変えずに＄100渡して釈放されました。
身ぐるみ剥がせばもっとあったのに可愛いギャングさん達との旅の思い出です。

ビーチの方へ足を向けるとそこはトムクルーズの映画カクテルの舞台です。
華やかで贅を尽くしたビーチリゾートのすぐ側には地上数十mほどの壁が永遠とそびえ立っています、壁の向こうはスラム街、
常に武装したガードが見張っていてよじ登ってくる人は発砲されるそうです。
まさに天国と地獄の景色でした。
ぼくはよく落ち着いていると言われますが、世界の景色を見ていると並大抵のことでは驚かなくなってしまうものです。良くも悪くも。